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祝・横浜DeNAベイスターズ26年ぶりの日本一!南場智子オーナーの「コトに向かう」話

この記事は「株式会社エス・エム・エス Advent Calendar 2024」の12月2日分の記事です。

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2024年11月3日、横浜スタジアムで開催された日本シリーズ第6戦で横浜DeNAベイスターズが勝利し、横浜ベイスターズ時代の1998年以来、26年ぶりの日本一になった。

私は2001年からプロ野球をみはじめ(同時期に少年野球チームに入り)、当時からベイスターズを応援してきた。千葉県在住だったのでハマスタに足を運ぶようになったのは大学に入った2011年からで、ちょうど現在の親会社であるDeNAによる買収前夜の時期だった。

当時のハマスタは本当に客が少なかった。チームも弱かった。そんな状況から、DeNAが球団を買収し、チームの強化に留まらない改善を進めていった。ハマスタは綺麗になり、イニング間や試合後の企画も盛りだくさんになり、YouTubeやSNSもうまく使いながら、ベイスターズは人気を取り戻して行った。その一つの到達点が、今回の日本一だと思う。

綺麗なオレンジ色(空席)してるだろ、試合してるんだぜ、それで。(2011年8月2日、広島東洋カープ戦)

一人のベイスターズファンとして、見事にチームを立て直してくれたDeNAには特別な思いがある。ありがとうDeNA!


DeNAといえば、今回のベイスターズ日本一でも大きな脚光を浴びたのが、ポジ◯◯の母南場ママこと南場智子さん(DeNA創業者、ベイスターズオーナー)である。私自身はDeNAで働いたことがあるわけでもないし、(『不恰好経営』こそ読んだが)南場ウォッチャーというわけでもない(経団連での南場さんの仕事についても特に詳しくない)のだが、ひとつ定期的に思い起こしている話がある。

それは、2013年の「グローバル・ウーマン・リーダーズ・サミット」での南場さんの講演のなかの「コトに向かう」話だ。講演の内容は以下のnoteに記録されている(以下、引用は全てこのnoteからの引用になるため、実際の講演での発言と異なる可能性があることはご承知いただきたい)。

note.com

私はこの講演を生で聴いたわけではなく、2020年になってから知った(当時はまだ録画が公開されていたのでそれも見た)。全体的に面白かったのだが、特に印象に残っていて何度も読み返しているのが以下の箇所だ。

それで、あっと思ったのが、自分のことすっかり忘れて、自分のバリューとかすっかり忘れて、仕事にだけ集中したらこんなにのびのび仕事ができる。楽しいんです。そして成果もついてきます。これを私は感じて、それからもう解放された人になりました。

(中略)

私はその時から、あまり自分に意識がいかない方がいいなと思いました。

それと同時に、あまり誰についていくとか、アイデアの帰属とか、あるいは評価だとか、ポジションとか、マネージメントとか。そういったことをすっかり忘れて仕事に打ち込むと、本当に良い結果がついてくるなと感じました。

(中略)

人とか、それから自分に向いすぎずに、仕事に向かう。コトに向かう。コトを成すことに精一杯取り組む。そうするといろいろなものがついてくるのかな、と感じたりします。

当時の南場さんはマッキンゼーのコンサルタントで、私はコンサル業界の雰囲気をよく知らないのだが、手前の部分で書かれているような「バリューを出せ」という圧力があり、それが仕事に悪影響を及ぼしていたという話だ。

私はソフトウェア開発者で、チームで成果を出すという雰囲気があることもあって、仕事をしていて「バリューを出せ」という圧力を感じることはないのだが、ともすると自分に意識が行きがちだなとは思う。開発者として働いていく上でスキルを広げたり深めたりしたいとかのキャリア上の欲みたいなものはあるし、何かを議論する際には自分なりに考えた意見は遠慮することなく主張する方で、そこには純粋な「仕事をうまく進めたい」という気持ち以外に自分の考えを仕事に反映したいという欲も関わっていると思う。

また、日本一になった後の南場さんのインタビューでも「コトに向かう」の話が出ていたのだが、そこでは以下のように語っていた。

仕事のやりやすさとか誰かの機嫌とか評価とかヒエラルキーとかですね。そういうことではなくて「こと」に向かおうよっていう約束事をすごく大事にして。


www.youtube.com

考え方や利害の異なる人と仕事をしているときなどに、「あー、仕事やりづらいなー」と思うことがある。自分はその「やりづらさ」を組織やプロジェクトの課題だと考えてそこにアプローチするように心がけてきていたが、一方で言い訳にしてしまうこともあるなーとこれを見ていて感じた。「やりづらさ」を解決可能な課題として捉えることと、それを一旦脇に置いて「でもやるんだよ!」と突破していこうとすることは両立するはずなのだが、一度前者の頭になってしまうと後者の頭に切り替えるのに時間がかかってしまうのだ。

周りの開発者と話していると、自分自身に意識がいっていないなと感じる人は魅力的に感じるし、いい仕事をしてもいるなと思うことが多い。南場さんの場合、マッキンゼーを辞めようとしていたことで職場での評価などを気にせずに仕事に向かえたというのがきっかけだったわけだが、まだまだ自分はそういう境地に至れていないというか、自分に意識が行くことが多いなと感じる。

「コトに向かう」ことができていないなと感じるときというのは、仕事の進みも悪いし、なにより自分自身の気分が悪いので、定期的にこの話を思い起こすようにしている。


(余談) 上掲の動画の中で、南場さんも今年の6月までは相手の先発が好投手の場合などに「今日は勝てなさそうだな」と「心の保険」をかけていた、という話をしていたのが面白かった。日本シリーズが始まるときに「ソフトバンクか〜勝てる気しないな〜まぁ日本シリーズに出られただけでもラッキーだったよな!」と思っていた自分が恥ずかしくなりました。これからは勝者のメンタリティで生きていこうと思います。