こまぶろ

技術のこととか仕事のこととか。

社外の人にしてもらった1on1を振り返る

随分と日が空いてしまったが、2月の中頃、ブログ仲間(?)のnitt-san(@nitt_san)さん*1に、1on1の機会を設けていただいた。nitt-sanさんによる記録はこちら。

nitt-san.hatenablog.com

社外の人と「いきなり1on1」?

今回、1on1をしてもらったnitt-sanさんは、僕の会社の上司でも何でもない。繋がりは、「write-blog-every-week」*2と、「エンジニアの登壇を応援する会」という2つの社外コミュニティであり、リアルでお会いしたのは今回の1on1が3回目だった。

nitt-sanさんは、先月から「いきなり1on1」という企画を実施されていて、僕の前にすでに6人の方と1on1をされている*3。今回の僕の1on1も、その企画の一環として行われた。nitt-sanさんが「いきなり1on1」を行うに至った経緯については、下に掲げた記事を参照していただきたい。

nitt-san.hatenablog.com

この記事では、nitt-sanさんとの1on1を、2週間が経とうとしている時点から改めて振り返る。

「30歳のときにどうしていたい?」

冒頭の方で受けた質問だ。この質問が出たのは、当日の最初に記入したヒアリングシートに僕が「目標がない」と記入し、しかもそれを最高の優先度としたからだろう。目標がうまく持てていないことが一番の関心事であり、この日の1on1に対してもこの辺りのモヤモヤが少しでも晴れればと思って臨んでいた。

そんな僕であったが、上に掲げた質問を投げかけられて、固まってしまった。ここで固まってしまうようであるからこそうまく目標設定ができないでいると言えばそれまでなのだが、一発の質問で何も考えられていなかったことに気づかせられた。この質問になぜ自分が固まってしまったのかを考えてみると、そこに「30歳」という具体的な数字が入っていることが大きいのではないかと思う。

以前、このブログで、プログラマとして生き、技術の進歩にキャッチアップしていくことへの不安を前面に出した記事を書いた。

ky-yk-d.hatenablog.com

このような記事を書くのであるから、ある程度長い期間、たとえば10年くらいは、プログラマとして生きていくことを意識していたはずである。そうであるとすれば、たかだか4年後である30歳のときのことはある程度具体的に考えていても良さそうなものである。しかしながら、僕は20年や30年、下手したら40年後のことについて不安を覚えてばかりだった。

長いタイムスパンでものを考えるのは時として必要なことだが、それが意味を持つのは、より近い将来や現在の行動を考えるのに役立ててこそだろう。将来への不安で現在が埋め尽くされ、近い将来を具体的に考えることから目を背けるようでは、せっかくの「長期的視野」も害あって利がない

今回、「30歳」という具体的な数字を伴った質問をされたことで、あちこちに散逸しがちな自分の意識を、特定の一点に集中させるきっかけを得ることができた。まだ、問いに対する答えを練り切れてはいないが、貴重な問いかけだったと感じている。

「どうすれば経験から学んだことになる?」

これは、僕が「経験から学ぶのが苦手なんです」というようなことを言ったことを承けての質問だ。僕は、本をよく読む方で、そこから得た学びを活かすこともそれなりにできていると思っている。しかし一方で、自分が実際に見た、体験した事柄から教訓や認識を抽出し、定式化する、あるいは別の機会に活かす、ということにはあまり自信がない。

ブログや日常の会話といった場面においても、書籍や人の話からの引用がソースであることが多い。他の人のブログや勉強会での発表に、現場でその人が経験した事柄に根ざした知見が表現されていると、「自分にはこれは無理だ・・・」と勝手に落ち込んでしまうこともある。いわば「経験からの学習コンプレックス」である。

以上のような自己認識を持っていた僕に、上掲の質問が持った意味は何だっただろうか。この質問は、「自分は経験から学べない」という僕が持っている信念に対して、「それを反証するような事象はどのようなものか」、と問うものだ。自分についての信念というのは、それが自分のことであるがゆえに、他者による検証を受け付けない独断的なものになりがちだ。

「自分は〇〇なんです」というネガティブな言及に対して、「そんなことないよ!」と否定するのは簡単だが、あまり有効でない場合がある。その信念が、自分の行動にロックを掛けてコンフォートゾーンに留まることを許すような働きを持っていたり、セルフ・ハンディキャッピングのために作り出されていることがあるからだ。

「経験から学べない」という自分の発言も、経験から学ぶために必要な事柄ーーとりわけ、不都合な現実に向き合うことーーへの億劫さに由来しているもののように思う。「本を読んで得た知識を行動に写したり表現したりできる」というポジティブな面ではなくあえてネガティブな面を訴えるのには、自分でもまだよくわからない心理が働いているのだろう。

自己についての信念が、歪んでいたり、有害であったりする場合に、それを矯正するのには、当人の口から語らせることが有効なのだと思う。今回のnitt-sanさんの質問は、僕の提示した信念が反証される条件を僕自身に語らせることで、その条件を満たす事例を見つけたときに信念を修正せざるを得ない状況を作り出す効果があった。

自らの口で語った反証の条件を満たす場面に直面してなお、その信念を守ろうとするのであれば、その信念はその事実性ゆえにではなく有用性において指示されているものだということが明らかになるだろう。

感想:「社外」であることの意味

冒頭に書いたとおり、nitt-sanさんと僕は同じ会社に勤めているわけではない。会社を異にする者が1on1を行うことには、それゆえの制約がある。コンプライアンス的に話せない事柄があったり、お互いに仕事ぶりを含む普段の振る舞いを知らないためにコミュニケーションに齟齬を生じやすかったりというのは、十分に想定されることだろう。

しかし、いい面もある。まず、利害関係がないので、自己防衛的な語りをせずに済む。そのため、素直に発言できるというだけでなく、会社では取り繕っている(つもりの)自分に都合の悪い部分も他人の前に晒すことになり、フィードバックが受けやすい。上司からであればムッとさせられるようなアドバイスも、素直に受け入れやすい。また、社内ではありがちな「フィードバックと評価が密着してしまう問題」の懸念もない。そして、転職という話題も躊躇なく持ち込める。

今回の1on1は、自分にとって気づきの多い時間だった。以上に感想を記したのは、そのごくわずかな一部分である。言及したところ以外にも、ハッとさせられたやり取りが多くあったことのみ記述しておきたい。これからゆっくりと消化し、今後の自分の行動に活かしていきたい。読者の方におかれては、くれぐれにここに書いた事柄をもって、nitt-sanさんの1on1の全体を評価されることがないようにお願いしたい。

nitt-sanさん、本当にありがとうございました。

この1冊ですべてわかる 新版 コーチングの基本

この1冊ですべてわかる 新版 コーチングの基本

*1:これが「さかなクンさん」と同等の表現になるのかどうかはよくわからない。

*2:週一回ブログを書く会。

*3:本記事の執筆時点で、12人の方と実施されている。