こまぶろ

技術のこととか仕事のこととか。

4/26「エンジニアリング組織論への招待 ☓ カイゼン・ジャーニー」 に参加しました

概要

イベントに参加してきました。内容はこの2月に相次いで出版された2冊の書籍、

のコラボ企画です。著者の方々は以下の三名です。

会場はajitofmでおなじみのVOYAGE GROUPさん。

「エンジニアリング組織論への招待 ☓ カイゼン・ジャーニー」 devlove.doorkeeper.jp

書籍について

開催が発表された時点で既に両方の書籍も読んでいました。順番としては、『エンジニアリング組織論への招待』の方が先で、 発売日前に手に入れていました。原理っぽい話が好きで、うっかり文系大学院まで行ってしまった人間には非常に好印象でした。

カイゼン・ジャーニー』については、ずいぶん遅れまして、読み始めたのは3月末でした。物語仕立てだと思って、買うまでもないと最初は思っていたんですね。すみません。本日の広木さんのお話にもあったように、物語仕立てであることには意義があるのだと、読んでからは思いました。

どちらの書籍も非常に楽しく読み、比べて読みたい、もっと知りたいと思っていた本だったので、このイベントが発表されたときは久しぶりに、

キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

となりました。

イベントの中身

本来はきちんとまとめて、内容を消化して公開すべきものと思いますが、鮮度が命、ということでメモ書きをそのまま公開させていただきます。後日、自分なりに消化して別途投稿するかも・・・?

前説

出席者の集まりが悪く、少し開始が遅れたので、広木さんが前でお話をされました。

エゴサーチして「エンジニアリング組織論よかった、カイゼンジャーニーよりいい」と言っている人がいて、問題と思った。自身もカイゼンジャーニーを読んでいて、同じテーマを違う形で扱っているだけの、いい本だと思っていたので、Twitterにその旨を書いたところ、同じくエゴサーチをしている新井さんに発見された(笑)一度会ってみて(主にアルコールが)盛り上がったので、今回こういうイベントをする運びとなった。

1.それぞれの書籍について語る(LT)

こちらについては、実際は、池田さん→原田さん→西村さん→小賀さん、の順番だったと思います。doorkeeperに書かれていた順番で下書きを用意していたので、そのままになっています。
また、開始の遅れによって40分取っていた時間が20分しか取れなくなったため、当初10分間だったと思しき持ち時間は5分に短縮され、みなさま苦労していらっしゃいました。

『エンジニアリング組織論への招待』①:池田秀行さん

発表タイトル:「(未定)」

何を話そうか迷ってタイトルを出していなかったら「未定」となっていた。不確実性の話をしている本なのでこのままでいいや、となった。

技術者と経営者の両方を経験されてきた立場からのお話でした。

  • 不確実性の扱いについて一貫した書籍
    • 思考方法
    • メンタリング
    • チーム運営
    • 組織運営
  • 感じたこと
    • 自分自身は不確実なことに対する耐性は強い(なんとかなるだろ、感)
    • その分、他人やチームの不確実性というものに、これまではキチンと向き合えていなかった
  • 自らを振り返るには最良の本
  • 組織リファクタリングのその先にあるもの
    • 技術・ビジネスモデルがコモディティになると組織力が武器になる
    • 組織もシステムもアーキテクチャが重要
    • 人には能力が眠っていて誰にでも創造性を発揮できるポテンシャルがある

「招待」②:小賀昌法(@makoga)さん

発表タイトル:「経営者が読みたくなる『エンジニアリング組織論への招待』の薦め方」

経営者と技術責任者の対話のベースとなる本。経営者に読んでほしい。

想定パターン

①本を薦める
②読む
③第1章で挫折する

なぜなのか

  • 目次を見てもテンションが上がらない
    リファクタリング」とか、「メンタリング」とか・・・。経営者はプライドが高いので「メンタリング」などと言われても「できてるわ!」となってしまいがち。
  • 序盤でエントロピーとか数式が出てくる。

対策:経営者が抱えていそうな課題からアプローチする

  • 抽象的な指示でもうまくいく、のが経営者にとっても嬉しいはず!
    →デリゲーションポーカーを使おう!
  • 「なんで最初は早かったのに後になると・・・?」
    →技術的負債の話。見えるようにしよう!
  • アーキテクチャの複雑性と将来要件の不確実性
    →エンジニアが知っていて、経営者が知らないこともあれば、経営者が知っていて、エンジニアが知らないこともある。それを解決するには、一緒に読むしかない!

カイゼン・ジャーニー』①:西村直人(@nawoto)さん

発表タイトル:「わいが西方でおま!」
遅れていらっしゃったので、原田さんに

チームに時間守れと言っているアジャイルコーチが時間通りに来ない

と皮肉られていました。 慌てていたのかLTもかなり苦しい形になってしまい、ご本人も下記のようにツイートされていました。

アジャイルチームを支える会」からきた。「元・流しのスクラムマスター」。

読書感想文

  • 「なぜこれをやるのか」
    これからの人のための理由、順序、そうそうあるある物語、共感が軸
  • ソフトウェアの難しさ
    広さ、難しさ、前提知識のアップデート、知識の再編集、オールインワンRailsみたいな感じ 昔あった話を、これからの人たちに向けて、今なりのやり方を整理する
  • 巻き込み力
    これから求められるHR、人材スキル

巻き込みエピソード

(※用意されていたようですが、時間短縮のため略されました)

カイゼン・ジャーニー』②:原田騎郎(@haradakiro)さん

発表タイトル:「カイゼン・ジャーニー」に何が書いていないのか

著者二人が下手くそで、しかし重要なことが書かれていない。

「助けて」

登場人物がみな、自分でなんとかしようとしすぎ。「マネージャー助けて」と言ってあげること。マネージャーからしてみれば、何をしているかよくわからないエンジニアには声をかけづらい。

「ゆっくり」

あのプロジェクトは急ぎすぎ。カイゼンをしていくには安定しておく必要がある。カイゼン・変化の間に、何スプリントか、何も起きない、ユーザーも平和な時期が必要。

アジャイルコーチは?」

外からくる傭兵はあんなに優秀ではない。アジャイルコーチは来てからしばらくは観察しなければならない。コーチの役割は、チームが見逃していることを気づかせること。

「逸脱しよう」

市谷さんと最初に話した時は「越境」ではなく「逸脱」だった。今までの自分のやり方を少し外れてみる。そうするとどう変わるかわかる。境界もわかる。

2.著者陣による対談

テーマ0:お互いの本を紹介する

『エンジニアリング組織論への招待』について(新井さん)

  • 多岐にわたる内容で、書くの大変だったんじゃないか。
  • 幅の広さと深掘りを両立できているすごい本。
  • 飲み会の時にかかった時間や章立てについて聞いた。
  • 認知心理学については自分も興味を持っていたので、学び直すチャンスだと思った。
  • 教科書のような感じ。

カイゼン・ジャーニー』について(広木さん)

伝えたいことがあった時に、納得する回路は人によって違うから使い分ける。自分は原理でしっかり説明されているといいタイプ。今回は、共感を伴った伝え方をするために必要な、ナラティブ性を入れたいとは思ったが、無理だと思った。そうしたら、自分の本と同時期にそのアプローチで書かれた本が出て衝撃を受けた。因果だなと思っているので、一緒に読んでほしい本。

テーマ1:2つの本に共通することは何か。なぜ、共通部分が生まれたのか。

市谷さん

ある難しさに向き合っていくためにどうするか?どうにもならないんじゃないかと諦めてしまいがちな問題に直面することはよくある。それに対して、『招待』はその構造を明らかにすること、『カイゼン・ジャーニー』は動的なアプローチ。

広木さん

共通部分だと思っているのは、「問いを持ちなさい、その問いはあなた自身に向かっています」ということが再帰的に、常に書かれていること。フレームワークや考え方の断片は様々な媒体に書かれている知識。これらの本に書かれているのは知恵。「この状況どうしよう」を問いかけること。なぜその問いを持ち続けられるかというと、良くしたいから。良くしたいという気持ちは、周りに振り回されて失ってしまいがちだが、問いを持ち直すことが必要。それをくどくど言っている本が2冊同時に出てしまったのは大変なこと。大変なので、多くの人で分かち合うと良い。バイラル性を出していきたい。。巻き込んだ方が楽だし、問いを捨てずにいられる。単なるノウハウとしてではなく、輸入物、舶来品ではなくて、色々な人の営みを自分たちのものとして捉え直そうとしたのが2018年2月という時期だった。

テーマ2:それぞれの本で異なる考え方、表現は何か。

新井さん

カイゼン・ジャーニー』は「物語、解説、物語、解説、、、」と進んでいく。個人からチーム、自社開発から受託開発、という展開。展開に合わせてプラクティスを紹介していく本になっている。『招待』は「Theory」であって、物語ではない。ページ数も多いので、深く解説ができている。『ジャーニー』の初稿にはダブルループ学習の話なども出ていたが、紙面の都合でカットしてしまった。『ジャーニー』を読んでよくわからなかったところを『招待』を読んでもらうといい。それと、キャラクターがいる。

広木さん

「いきなりエントロピーとか言っちゃう感じ」の理屈っぽさ。シンプルな理屈が説明されないでアジャイルスクラム、マイクロサービスが唐突に出てきて、若い人が飛びついて失敗することをよく見る。ちゃんとベースとなる理屈から出発するものを書こうと思った。情報科学という分野、そもそも科学とは、というところを飛ばしがち。経験主義にせよ、仮説法にせよ、大学の情報系の教養ではやるが、実務に触れていないので重要性がわからずに過ぎてしまう。実務に触れてからだとわかる話、サイバネティクスエントロピー科学史が『招待』に書かれている。
カイゼン・ジャーニー』も『エンジニアリング組織論への招待』も、「なぜ自分のところの事情がこんなに書かれているんだ!?」と言われるが、人類がずっとそうだったから。そういう部分に触れたいなら、『招待』。青春時代、大学時代の取り戻しができるかもしれない。

現場でそれぞれの本をどんな風に使っていけばいいか。著者が気をつけていることは?

市谷さん

「ぼっち」の人向けにこの本は書いた。「なんか変だな」「なんでこんなことしてるんだろ」と思っても、周りは全然感じていない、という境遇にある人に、ぼっちでも次の一歩を踏み出せると思ってほしい。原田さんが「助けて」という話をしていたが、「助けて」と言っても助けてもらえないことも多い。そのときに傍らに置いておいてほしい。

広木さん

何人かで読んで思ったことを言いあった方がいい。ちょっと気になる、ちょっとむかつく、ちょっと話が通じないかもしれないあいつと、これをきっかけに話をする、アルコールを飲む。色んなチームを見ていても、大人は嘘をつく。大したことのない諍いが大きなものになり、あとから理屈や正しさを持ち出される。問いを自分に向けること。ちょっとコミュニケーションをとる。ちゃんと話をしなければならないと気付きながらも、なんか嫌だなと思ってコミュニケーションを怠った結果に起きる問題。コンティンジェンシー理論に関して。お互いにどっちが先にするかというのを監視しているとだめ。それを突き崩す社会の仕組みを作らなければならない。「あいつと話したくないなー」と思い浮かべているあいつと話をしてみよう。ソーシャルメディアを作っていた経験からすると、最強のソーシャルメディアはアルコールだが、アルコールに匹敵するバイラル性、話したくなるようなものを作ったつもり。ビールがライバル。

新井さん

「ファイブフィンガー」などのプラクティスをやってみると、チームが変わっていくんじゃないか。そういう使い方をしてもいいと思う。

お互いに聞いて見たいこと。

Q. 新井さん

表紙の色や英語タイトルの決め方?

A. 広木さん

かっこよさめの本のタイトルをつけたかった。アルファベットの英単語二つ(『Joy, Inc』とか)をつけようと思ったが、技術評論社が「そういうのは違う」という雰囲気があった。洋物に見えては、という感じだったので、わもので、「招待」とついている本があったのでつけた。装丁を考えているときに、デザイナーから現在の英題が出されていたのでいいなと思ってつけた。色については、『ティール組織』が日本で出る前だったが、原書で流行りそうな雰囲気を見ていたので、近いもので少し差別化した。

Q. 広木さん

モデルと思しき人から何か言われたか。

A1. 市谷さん

直接言われなくても、肖像権とか色々あることがわかった。今日の司会の方もモデル。ギルドワークスの同僚だが、こだわりが強い。細かいすぎて色んな人が逃げていく。そんな人。

(司会の方「最初は本名で登場していたんですが今は違います」)

A2. 新井さん

僕も出ています。最初の方に出てくる。

Q. 広木さん

見る人が見れば実際の出来事そのままじゃんという人がいるのでは?

A. 市谷さん&新井さん

実体験に基づいている確かに出している。1章の終わりの、勉強会をやった後に声をかけてくれた人がいた、というのはそう。

会場からの質問

Q

技術的負債の返却は、ビジネスインパクトに中々跳ね返ってこず、経営層やステークホルダーの協力を継続的に得ることが難しいと感じています。特に長期プロジェクトで中々成果が出ないような状況を乗り越えるコツやエピソードがあれば聞きたいです

A1. 広木さん

自社サービスをやっている組織がどうするかというのが『招待』で、最初は受託なのが『ジャーニー』。自分たちでビジネスをやるとなると、技術力・エンジニアリングリソースという最も調達が難しくなっているリソース、ボトルネックになるリソースの効率化に投資できない会社が生きていけるはずがない。そういったことをきちんと伝えれば、経営層にも伝わるはず。伝え方が悪いのではないか?お互いの認識をすり合わせようと思って、コミュニケーション取ろうとおもって、経営層やステークホルダーにもアプローチするべき。「いつもなんか文句を言っているやつ」と思われたらだめ。あと、「作り直し幻想(作り直せば負債がなくなるという幻想)」は危険。

A2. 市谷さん

「できなくなることがこれだけあります」ということをちゃんとコミュニケートする。エンジニアが逃げてしまう、一緒に働いていた仲間が居なくなってしまうということを目の当たりにすれば、やばいことはわかるはず。

Q

『エンジニアリング組織論への招待』への質問です。 「不確実性に向き合う」というテーマに少しでも関連する理論やプラクティスが全部ブッ込まれてるように感じるほどの情報量だと感じました。これらは広木さん自身、全部実際に実践してきた経験を通して書かれたのでしょうか。どの辺りが理論で、どの辺りが実践なのかに興味ありました。

A. 広木さん

全部やったことのあること。実践したことのないものは理論として書いていない。理屈が切断されているよりは、実践が飛んでしまう方がマシだと思ってこうなった。

Q

経営者へ本を薦めるお話がありましたが、マネジメントされている側の立場として、同僚やマネージャーなどに広げていく方法など何かありませんか??

A1. 新井さん

勝手にぼんぼんアップする。「実は読んでいるんですよ」という人は出てくる。想いは伝わる人には伝わる。レスがなくても続ける。あと、問題駆動。その人、そのチームが抱えている問題に 関係する形で伝えよう。

A2. 広木さん

とりあえず買っておいておく。UX的な話にはなるが、自分で見つけておもしろいと思うと勧めたくなるが、色んな人に勧められると斜に構える人が出てくる。「自分で見つけた」と、斜に構えるタイプの人に感じさせることは重要なのではないか。「社内Slackでシェアする限りでは写真を貼ってもオッケー!!」ユニコーン企業数社で全社チャンネル(#general)に@channel で投稿されている。ユニコーンになりたければ投稿しよう!

最後に一言

新井さん

「夜中のラブレター」。ちょっとテンションが上がって考えたこと、妄想をやってみる。甚大な損失を負うことはたぶんない。やってみると自分ごとになってきて楽しい。そんなジャーニーを。

広木さん

セルフマネジメントができることを示すために45キロやせ、禁煙もした。この本を読めばできる!

市谷さん

誰かと一緒に仕事をする、何かを作るのは難しい。協働作業はなかなかうまくいかない。なんとかしていくやり方を広めていくことを読者と一緒にやっていきたい。全部は同意できなくても、少しでもやってみよう。

3.懇談会

「じゃんけんぽん(本)」という書籍のプレゼント企画がありました。広木さんは「デリゲーション・ポーカー」を付けて贈呈という大盤振る舞いでした。僕はゲットできませんでした(が、サインは広木さん新井さんからいただけました!)。

その後の立食形式の懇談会では、広木さんが独演会をしていました。その内容も非常に面白かったのですが、メモをとるという感じではなかったので、印象に残ったお話だけ。

電車の都合で市谷さんが早く帰られるタイミングで、みなさんで写真撮影。最後は、広木さんの号令で一本締めとなりました。懇談会の時間がたっぷりあったので、著者のみなさんや他の方々とお話できたのはとてもよかったと思います。

おわりに

素晴らしいイベントだったと思います。著者のお三方、LT登壇者の方々、スタッフのみなさま、本当にありがとうございました。新井さんが最後に仰っていましたが、これから日本のソフトウェア業界がもっと楽しく、よいところになるといいですね。

※書籍の読書体験と今回のイベント体験の両方を元に考えた記事を別途書くかもしれません。乞うご期待。。

カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで

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